金剛力士



金剛力士(こんごうりきし)は、仏教の護法善神(守護神)である天部の一つ。サンスクリットではVajradhara(ヴァジュラダラ)と言い、「金剛杵(こんごうしょ、仏敵を退散させる武器)を持つもの」を意味する。開口の阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の2体を一対として、寺院の表門などに安置することが多い。一般には仁王(におう、二王)の名で親しまれている。

 

 

日本では寺院の入口の門の左右に仁王像が立っているのをしばしば見かける。像容は上半身裸形で、筋骨隆々とし、阿形像は怒りの表情を顕わにし、吽形像は怒りを内に秘めた表情に表すものが多い。こうした造形は、寺院内に仏敵が入り込むことを防ぐ守護神としての性格を表している。

仁王像は安置される場所柄、風雨の害を蒙りやすく、中世以前の古像で、良い状態で残っているものはあまり多くない。寺門に安置された仁王像で日本最古のものは法隆寺中門に立つ塑像であるが、後世の補修が甚だしく、吽形像の体部はほとんど木造の後補に変わっている。なお、仁王像は仏堂内部に安置されることもある。奈良・興福寺の仁王像(鎌倉時代、国宝)は旧・西金堂堂内に安置されていたもので、当初から堂内安置用に造られたため、像高は小ぶりである。

仁王像は阿形・吽形の一対として造像するのが原則であるが、これを1体のみで表した、執金剛神(しゅこんごうしん)と呼ばれる像がある。東大寺法華堂(三月堂)の本尊の背後の厨子内に安置された塑造執金剛神立像(国宝)がその例で、形勢や表情は一般の仁王像と似ているが、裸形でなく甲冑を着けている点が異なる。東大寺法華堂にはこれとは別に一対の仁王像があり、阿形像が「金剛力士」、吽形像が「密迹力士」(みっしゃくりきし)と呼ばれている。これも着甲像である。

千手観音の眷属である二十八部衆の中にも仁王像があるが、この場合、阿形像は「那羅延堅固王」(ならえんけんごおう)、吽形像は「密迹金剛力士」(みっしゃくこんごうりきし)と呼ばれる。

現存する大作としては建仁3年(1203)造立の東大寺南大門金剛力士(仁王)像を挙げねばならない。造高8メートルに及ぶこれらの巨像は、平成の解体修理の結果、像内納入文書から運慶、快慶、定覚、湛慶(運慶の子)が小仏師多数を率いておよそ2か月で造立したものであることがあらためて裏付けられ、運慶が制作の総指揮にあたったものと考えられている。


日本で見られる金剛力士


最勝院(青森県弘前市)

円覚寺(青森県西津軽郡深浦町)

恐山菩提寺(青森県むつ市)

常堅寺(岩手県遠野市)

天徳寺(秋田県秋田市)

西方寺(宮城県仙台市)

立石寺(山形県山形市)

恵隆寺(福島県河沼郡会津坂下町)

観音教寺(千葉県山武郡芝山町) - "芝山仁王尊"として知られる。

浅草寺(東京都台東区)

観音寺(東京都世田谷区)

本門寺(東京都大田区)

久遠寺(山梨県南巨摩郡身延町)

善光寺(長野県長野市)

若沢寺(廃寺=長野県松本市波田) - 1974年1月県宝指定

鳳来寺(愛知県新城市)

財賀寺(愛知県豊川市) - 仁王門の2躯は重要文化財

観音寺(愛知県名古屋市)-荒子観音。仁王門の2駆は円空作

願成寺(岐阜県岐阜市)

円鏡寺(岐阜県本巣郡北方町)

華厳寺(岐阜県揖斐郡揖斐川町)

乙宝寺(新潟県胎内市)

蓮華峰寺(新潟県佐渡市)

瑞龍寺(富山県高岡市)

千光寺(富山県砺波市)

妙成寺(石川県羽咋市)

那谷寺(石川県小松市)

明通寺(福井県小浜市)

若狭神宮寺(福井県小浜市)

中山寺(福井県高浜町) - 山門の2躯は重要文化財

園城寺(滋賀県大津市)

西明寺(滋賀県甲良町)

広隆寺(京都府京都市)

勝持寺(京都府京都市)

善峯寺(京都府京都市)

万寿寺(京都府京都市)

愛宕念仏寺(京都府京都市)

円隆寺(京都府舞鶴市)

金剛院(京都府舞鶴市)

多禰寺(京都府舞鶴市) - 山門の2躯は重要文化財

四天王寺(大阪府大阪市)

叡福寺(大阪府太子町)

東大寺(奈良県奈良市) - 南大門の2躯および法華堂の2躯は国宝

興福寺(奈良県奈良市) - 国宝館・旧西金堂の2躯は国宝

法隆寺(奈良県生駒郡斑鳩町) - 中門の2躯は重要文化財

金峯山寺(奈良県吉野町)

高野山(和歌山県伊都郡高野町) - 大門の2躯は重要文化財

長保寺(和歌山県海南市)

如意寺(兵庫県神戸市)

伽耶院(兵庫県三木市)

佛教之王堂念仏宗無量寿寺(兵庫県加東市) - 山門の2躯は世界最大級。南門にも石像2躯あり。

摩尼寺(鳥取県鳥取市)

長谷寺(鳥取県倉吉市)

金山寺(岡山県岡山市)

真光寺(岡山県備前市)

西國寺(広島県尾道市)

阿弥陀寺(山口県防府市)

太龍寺(徳島県阿南市)

霊山寺(徳島県鳴門市)

善通寺(香川県善通寺市)

志度寺(香川県さぬき市)

石手寺(愛媛県松山市)

観自在寺(愛媛県愛南町)

竹林寺(高知県高知市)

清瀧寺(高知県土佐市)

如法寺(福岡県豊前市)

両子寺(大分県国東市)

感応寺(鹿児島県出水市) - 石像4躯

桃林寺(沖縄県石垣市)

今村神社(群馬県伊勢崎市)


自宅で鑑賞できる金剛力士


イSム 金剛力士 こんごうりきし

 

¥129,600

 

阿形:約330(H)×180(W)×95(D)mm 2kg

吽形:約330(H)×175(W)×125(D)mm 2kg

 

モデルは鎌倉時代に造像された国宝「金剛力士立像」。 まさに力を爆発させようとする瞬間のような阿形と、怒りを内に秘めて立つ吽形が二体一対となり、緻密に練り上げられた空間表現が独特の臨場感を生み出す。 隆起する筋肉、浮き出す血管、激しく堂々とした表現は、写実主義に徹した鎌倉彫刻の特徴を充分に発揮した傑作。